経営やマネジメントの世界では、時々「サプライズ」が起こります。

突然の人事。 突然の組織変更。 突然知らされる新しい方針。 本人にとって重要なことなのに、水面下で話が進み、最後になって知らされる決定。

中には、サプライズを自分の権力の大きさとして使う人もいます。

一方で、

「そんなに驚くとは思わなかった」 「後から伝えればいいと思っていた」

という人もいます。

こちらは、周囲の人の心がどう動くかを見る力が、まだ十分ではないのでしょう。

しかし、組織の中でサプライズは、想像以上に大きな損失を生みます。

人は「知らされなかったこと」に傷つく

サプライズを受けた人の心には、

「自分はのけ者にされていた」 「自分には知らせる価値がなかったのか」 「自分のことを考えてくれていなかった」

という思いが生まれます。

そして一度傷つくと、本来なら、

「会社にとって何が一番いいか」 「どうすればこの決定を成功させられるか」

と考えられたはずの人が、

「なぜ自分には言わなかったのか」

という感情の中で立ち止まってしまう。

場合によっては、

「だったら簡単には協力しない」

という気持ちさえ生まれます。

本来仕事に使われるはずだった知性も経験も時間も、「感情の後始末」に使われてしまうのです。

これは組織にとって、まったく生産性のないことです。

サプライズをなくすとは、何でも早く公表することではない

もちろん、経営にはまだ公にできないこともあります。

大切なのは、誰がそのプロセスにおける重要なステークホルダーなのかを見極めることです。

そして必要な人には、早い段階から少しずつ情報を流しておく。

「まだ決定ではありません」 「今は意見を求める段階ではありません」 「ただ、この方向で検討が始まっています」 「時期が来たら、きちんと話し合いましょう」

そう伝えておくだけで、人の心の準備は大きく変わります。

人には、物事を自分事として受け止める時間が必要なのです。

その時間をもらった人は、やがて、

「では、どうしたらうまくいくだろう」 「自分なら何ができるだろう」

と、プロセスの中に入ってきてくれます。

人を巻き込むとは、会議に呼ぶことではありません。

人の心が、その物事の中に入るための時間をつくることです。

春は突然来ない

自然を見れば、このことはよくわかります。

ある朝突然、すべての花が咲くわけではありません。

冬の間から根は動き、日の長さが変わり、芽が膨らみ、そして花が開く。

花が咲いた瞬間だけを見れば「突然」に見えます。

しかし、その前には長い準備があります。

組織も同じです。

良い変化とは、必要な人に情報が流れ、人の心が準備され、理解が育ち、やがて皆が同じ方向に歩き始めることです。

正式発表の時には、

「そうか、いよいよここまで来たか」

と受け止められる。

これが成熟した変化の進め方だと思います。

「知らせる」こともリーダーの規律である

誰に、何を、いつ伝えるのか。

誰にはまだ伝えないのか。

どの段階で意見を求めるのか。

これを丁寧に考えることは、リーダーの仕事です。

情報を持っていることを力だと思う人は、情報を囲います。

本当に力のあるリーダーは、情報をどう流せば組織全体が最も強くなるかを考えます。

人も組織も、その大きな流れの中にあります。

必要なところには、必要な時に情報が流れる。

まだ必要でないところには、その時には流れない。

そこに、「自分だけが握っている」という執着も、「自分が動かしている」という驕りもありません。

ただ、その時に必要なものが、必要なところへ流れていく。

経営者やリーダーも、この流れを感じることができれば、物事をもっと滑らかに進められます。

人を押さえつけなくてもいい。 驚かせて従わせなくてもいい。

必要な人に必要な情報を流し、人の心が整う時間を与える。

すると、人は自ら動き始めます。

人を驚かせないことは、慈悲であり規律である

人の心は、思っているより繊細です。

肩書きが下だから傷つけてもいいわけではありません。

だからこそリーダーは、サプライズが人の心にどれほど深い傷を残すことがあるのかを知っておく必要があります。

人を驚かせない。

準備する時間を与える。

必要な人を早くから流れの中に入れておく。

これは単なるコミュニケーションの技術ではありません。

人への敬意であり、組織のエネルギーを無駄にしないための規律です。

川を無理に押して流す必要はありません。

流れる道を整えれば、水は自分で流れていきます。